AIを使って1日で100枚のデザインを作ってみた結果
AIでバナーを100枚作ったらどうなるか。
結論から言うと、
「作ること」は驚くほど簡単でした。
問題はそのあとに起きました。
100枚が「1分」で出てくる時代
セプテーニグループが2025年にリリースした「FUKURO AI STUDIO」というサービスがあります。
既存のバナーを読み込ませてプロンプトで指示を出すと、
約1分で100本のバナーを自動生成してくれます。
Midjourneyの最新バージョン(V7)にはドラフトモードがあり、
1枚あたり約5秒で画像が生成されます。通常モードの10倍の速度です。
100枚作っても計算上は約8分。
プロンプトの入力時間を含めても、
1〜2時間で終わります。
従来、バナー1枚を外注すると2〜3営業日、費用は1枚あたり15,000〜30,000円。
100枚なら150万〜300万円、
数ヶ月の制作期間が必要でした。
それが今、AIなら1枚あたり3,000円以下、時間は数分。
コスト削減率は90%以上。
この数字だけ見ると、革命に見えます。
で、100枚のうち使えたのは何枚か
ここが一番大事なところです。
100枚作ると、
確かに「おっ」と思うものが出てきます。
でも冷静に見ると、似たようなレイアウト、似たような色使い、似たようなテイストが並びます。
同じAIモデルを使っている以上、
出力に傾向が出るのは当然です。
パルコが2023年末に挑戦した全工程AI制作のキャンペーンでも、
担当者がこう語っています。
「90点の出来映えまでは早い。でも90点を100点に近づける調整に6ヶ月かかった」と。
100枚の中から「これは使える」と判断できるのは、せいぜい数枚。
しかもそこから人間の手で調整しなければ、実際のクライアントワークには耐えません。
AIで100枚作れることに意味があるのではなく、
100枚の中から「これだ」と選べることに意味があります。
量産の価値は「速さ」ではなく
「試行回数が増えること」です。
「AIスロップ」という問題
2024年、メリアム・ウェブスター辞典(英語圏で最も有名な辞書のひとつ)が選んだ「今年の単語」は「Slop(スロップ)」でした。
AIスロップ(AIが人間の監修なしに垂れ流す低品質コンテンツ)の検出件数は、
過去1年で717%増加しています。
デザインの世界でも同じことが起きています。
類似デザインの氾濫。
同じAIモデルを使えば、誰が作っても似たテイストになる。
競合も同じツールを使っているので差別化できません。
ブランドの個性が消える。
AIが出す「それっぽいデザイン」は、
どこかで見たことがある仕上がりになりがち。
無個性なテンプレートが量産されるとブランドの独自性が失われます。
品質に天井がある。
AIは「平均的に良いもの」は得意ですが、
「突き抜けたもの」は生み出しにくい。
100枚作っても、90点止まりの100枚が並ぶだけです。
量産できることがゴールになった瞬間、
デザインの価値は消えます。
それでもAIを使うべき理由
ここまで聞くと「じゃあAIは使えないのか」と思うかもしれません。逆です。
使い方を間違えなければ、
AIはデザイナーにとって最強のツールです。
日本デザインが2025年12月にWEBデザイナー110名に行った調査では、
AIを活用しているデザイナーの62.7%が「単価が上がった」と回答。
「単価が下がった」と答えた人は0%でした。
さらに、63.2%が「修正回数が減った」、47.2%が「成果物の品質が向上した」、
43.4%が「提案が通りやすくなった」と答えています。
何が起きているのか。AIをうまく使っているデザイナーは、こう活用しています。
たたき台を高速で作る。
デザイナーの58.2%がAIを「ラフ案の作成」に使っています。
ゼロから考える時間が減り、クライアントとの方向性のすり合わせが早くなります。
バリエーション出しに使う。
「A案とB案どっちがいいですか?」ではなく、
「10パターン作ったので選んでください」が可能になる。提案の幅が変わります。
最終仕上げは人間がやる。
AIの出力をそのまま納品するのではなく、素材やアイデアとして使い、
最後の調整は自分の手で行う。この工程があるかないかで品質が決定的に変わります。
AIの価値は「作る」から
「選ぶ」に移った
WEBデザイナー279名を対象にした調査で、75%が「AIの進化はチャンスだ」と回答しています。
そして、これからの時代に必要な力として最も多く挙げられたのは「課題発見・解決力」69.9%、
次いで「コミュニケーション力」67.0%、「人間ならではの創造性」64.5%でした。
「デザインツールが使えること」は入っていません。
AIが100枚を一瞬で作れる時代に、
「作る力」の価値は下がりました。
代わりに上がったのは「何を作るか決める力」と「100枚の中からベストを選ぶ目」です。
つまり、デザイナーの仕事は「制作者」から「ディレクター」に変わりつつあるということです。
AIで100枚作るのは簡単です。問題は「その中から何を選ぶか」。
量産できること自体はもう価値ではありません。
AIを活用して単価を上げているデザイナーは、AIを「制作ツール」ではなく
「試行回数を増やすツール」として使っています。
作る力よりも、選ぶ目と判断力。そこが勝負の分かれ目です。